8月26日 子どもたちへのメッセージ(第三十五回)の収録を終えて
今回の放送では「子どもたちとPL法」について取り上げました。1995年にPL法が施行されたことにより消費者の安全は保一歩前進しましたが、子どもたちの安全に至ってはまだまだ注意が必要です。事故が起きてからでは遅いので、まずは家庭や学校の身近な場所で、子どもたちを危険から守っていきましょう。
■PL法について
皆様、こんにちは。参議院議員の浜田まさよしです。今週は、子どもたちとPL法について考えていきたいと思います。最初にPL法の成り立ちについて説明します。
「PL法(製造物責任法)」はおもちゃや電化製品などの欠陥商品で人の生命、身体、財産に被害があった場合に、その損害賠償を容易にできるように、1995年に施行された法律です。従来の民法の損害賠償(不法行為責任)では、被害者が加害者の故意または過失を立証しなければなりませんでした。しかし、その立証が困難なことから、加害者に「過失」はなくても、製品自体に「欠陥」があれば、責任を問えるようにしたのが元々の考え方です。この法律が成立してからの7年間のデータを見ますと、当初はかなりの数の裁判が発生すると見込まれましたが、7年間で訴訟件数は146件(和解、勝訴、敗訴がそれぞれほぼ三分の1ずつ)です。
■子どもたちへの影響
子ども関連でいうと、おもちゃの「ガチャガチャ」を飲み込んでしまった事故であったり、病原性大腸菌O157に汚染された給食であったり、自転車のペダル部分の金具が飛び出していて足に大けがをしたり、このような事件がPL法の対象となっています。
そこで水谷さんは製造者である企業側の変化について触れました。この法律が出来たおかげで企業の発想が変わって、実はこの法律以前と以降の取扱説明書がまったく違うといいます。例えばゲーム機に対して「30分以上やらないで下さい」などの諸注意が取扱説明書に明確に記載されるようなりました。子ども対象の製品には万全の注意を払うように作ってきています。
あるおもちゃメーカーでは、一つの設計や商品選択の際に350のチェックリストを作っています。様々なケースが想定されたこのチェックリストが、その背後で作られるようになったということがこの法律の大きな成果かもしれないですね。
また、先述した訴訟件数が7年間で146件という数字ですが、その裏には毎年1000件以上の「PL保険」の支払いという、例えば何か問題が発生した場合、訴訟までいかず、和解で消費者に金額を払い補償するという形で消費者の安全が守られてきているという状態もあります。そういう意味ではこの法律で、子どもたちが身体的にも経済的も守られるようになったということになります。
■現PL法の穴
しかし、社会の変化により現PL法ではフォローできない部分があることも確かです。
この法律での対象物の定義が、「製造または加工された動産」となっていることから、その対象は有体物に限られ、プログラム等のコンピューター著作物、DVDの映像などは対象外になります。しかし、例えば有害な映像を見てしまった子どもたちが、強い影響を受けてしまうなどの被害の実態があります。法律が施行されて10年以上たっていることから、場合によっては先述したものも対象に加えていく、そのような議論が求められています。もちろん難しい問題も多々ありますが、これは大きな改正のポイントだと思います。
もう一つは、訴えることができる期間(除訴期間)が、民法の場合は20年に対してPL法は10年と短いという問題もあります。実際、製品が原因で10年以上たってから判明した事例も過去にあります。この除訴期間の延長についても今後考えていきたいと思います。他にも、先述した通りPL法の対象が「製造または加工された動産」であることから、不動産は不適用とされます。また、サービス、電気などのエネルギー、未加工農畜物も対象外となります。このようなことも検討が必要です。
■まずは周りの大人がチェックを
また、法律のみで守られる問題ではなく、家庭や学校で教えるべきことも重要であることを忘れてはいけません。
ここで是非紹介したいのは消費者庁HP内の「安全チェックリストとワンポイントアドバイス」(→ホームページ)というページです。0歳児から年齢別に、このような状況にやけどをする、ベランダは危険な場所なのでこのような状態にしましょう、など細かく説明されています。製品側のみに頼るのではなく、親から子供にこのように注意をしていくことによって事故を防げますので、是非このHPを活用してほしいですね。
また消費者側から気づく製品の欠陥もあるかと思います。早急な発見はそれ以降の事故を防ぐことにつながります。このような問題が起きた時は各地にある消費者相談センターに連絡して、企業側の改善へとつなげてください。
「子どもたちのメッセージ」は毎週日曜日17:25~40 ラジオ日本AM1422Hzで放送中です。(→番組ホームページ)
- 0 ツイート