5月13日 子どもたちへのメッセージ(第二十回)の収録を終えて
第二十回のテーマは「子どもたちの学力の低下」についてです。昨今、分数の出来ない大学生や九九の出来ない高校生についてニュースになりました。この学力の低下と「ゆとり教育」の導入との関係について、基礎的な学力を身に着けるために必要なこと、中高一貫の問題などについて、先週に引き続き、現代の子どもたちの教育についてお話しました。
■分数の出来ない大学生
皆様、こんにちは。参議院議員の浜田まさよしです。本日は子どもたちの学力の低下について考えていきたいと思います。
1999年に京都大学の西村和雄さんが出された「分数の出来ない大学生」という本があります。彼は経済学部の先生であったのですが、学生に数学の微分の話をすると、首をかしげることが多くなったといいます。調査をしたところ、有名大学でも小学生レベルの算数がおぼつかないという学生がかなりいたそうです。昨年4月から7月にかけて、再び調査が行われ、国公立48大学の入学直後の学生約6000人を対象に数学の「平均」の意味を聞いたところ、正しく理解していたのはその四分の一でした。
■「ゆとり教育」との関係
学力の低下の問題は「ゆとり教育」が導入されてからだという声もありますが、これまでの日本の子どもたちは、知識力は高いが、自分で物を判断して動くことはできないと言われてきました。これは(1970年代以降の)詰め込み教育が原因といわれ、もっとゆとりを持ち、自ら考える力を養い、創造性ある新しい子どもたちを育成しようというのがゆとり教育の始まりになります。
しかし、ゆとり教育という理念と併せて、学校が完全週休二日制になってしまった点と授業時間が短くなってしまった点、この二点が相互作用してしまい、元々創造性の発揮を主とした理念が上手く実現していきませんでした。重ねてバブル崩壊があり、創造性の発揮と共にもっと地道な、例えば根気強さというような必要なものが逆に欠けてしまった、などの反省がゆとり教育にはあります。
■基礎的な学力を身に着けるために
基礎的な学力を身に着けるためには今必要なものとは何でしょうか。
水谷さんが提唱したのは「徹底した反復」です。結局、掛け算であれ九九であれ漢字であれ英単語であれ、とにかく徹底して反復し、覚えさせることが必要だといいます。私自身も、例えば「百ます計算」といった基本の反復など効果はあると思います。さらに子どもに重要なのは「根気」、そして「達成感」。これらがベースとなって学ぼうという意欲と習慣ができます。その子どもというのは他の教科でも同様に対応できます。また、「基礎学力」とありますが、学習指導要領では「生きる力」といいます。しかし、生きる力というのは決して学習塾では教えてくれません。自分は何が分からないのか、分からないのであればどうすれば身に着くのか、失敗すれば何故失敗したのか。このように思考を辿っていく力が本来の「生きる力」です。それはある一定の根気強さの繰り返しの中から、自分自身が見出していくものなのかもしれません。
■中高一貫校の問題
中高一貫校についても様々な問題があります。
水谷さんが挙げたのは、出来る子たちに特別な教育を六ヶ年レベルで行っていく例と、いわゆる障がいなど色々な問題を抱えていて、特に手厚く継続した教育が必要な子たちの例。これらは中高一貫の成功例です。しかし、中間層の子をそのまま入学させてしまっては、学校が崩壊すると言います。
文科省の調査によりますと、中高一貫校は高校入試がないので勉強に対し中だるみになってしまう、よって生徒の学力が二極に分かれ、それが難しい問題となっています。
■教員採用の間口を広げる
最後に、教える側、つまり先生の能力はどうなっているのでしょうか。
今後10年で教員全体の三分の一、20万人弱という団塊世代の方々が大量退職を迎えます。そういう意味で現在教育界では、教育の質をどう保つのか、これが大きな課題となっています。
過去教員であった水谷さんは、段々と教員のレベルが下がっている現状を問題視していました。結局は教員自身の勉強不足だといいます。その意味では、もっと広い範囲で能力を持った人間を、研究者であれ会社にいた人間であれ、教員として指導を受けた上で採用できるような体制の変革をすべきだと指摘しました。教員の力というのは「子どもに何かを教える力」ではなくて「子どもの持っている力を引き出す力」です。それは決して、教育機関で学ぶから出来るのではなくて、水谷さんが指摘したように社会の中で色々な経験をすることから身に着くものです。是非今後とも改善していきたいと思います。
「子どもたちのメッセージ」は毎週日曜日17:25~40 ラジオ日本AM1422Hzで放送中です。(→番組ホームページ)
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