2月5日 子どもたちへのメッセージ(第六回)の収録を終えて
今回のテーマは「こどもたちのいじめ」を取り上げました。なぜいじめが起こるのかを考えるにあたり、家庭環境・社会環境の密接な関係があります。また国の調査によると子どもたちはいじめの被害者であり、また加害者にもなりうるのだと浜田は指摘します。広がっていくいじめの被害を食い止めるためにも、いま求められていることは何なのでしょうか。
■いじめ顕在化の時期
皆様、こんにちは。参議院議員の浜田まさよしです。第六回目のテーマは「子どもたちのいじめ」です。いじめが社会問題化してからずいぶん経ちましたが、そのきっかけを皆さんご存知でしょうか。昭和60年に中学生の少年が盛岡のショッピングセンターでいじめが原因で、首つり自殺をしたという痛ましい事件がおこり、同年文部科学省よりいじめの実態調査が初めて実施されました。
平成22年度のいじめ認知件数は児童・生徒1000人当たりで、小学生は約5件、中学校で約10件、高校で約2件と、中学校で多く、特に中学1年生段階が群を抜いて多く、全国で15件(全体の2割)。ただしこれはあくまで氷山の一角です。2004年に文科省の研究所が約600名の子どもたちを、小学4年生から中学3年生までの6年間、年2回で追跡調査をしました。興味深いことに、これによると、この6年間に9割の子どもたちが、いじめの「被害者」にも「加害者」にもなっているという結果がでています。
ここで保護者の方に気付いてほしいのですが、もはや「いじめ」は一部の子どもたちの問題ではありません。子どもたちは、「いじめ」の被害や加害に巻き込まれやすくなっているということを認識して欲しいと思います。
このいじめが加速度的に増えていったのは1991年以降だと水谷さんは指摘しました。1991年にバブル経済が崩壊し、経済が右肩下がりになり、社会的にも閉塞状況が続いています。水谷さんが強く主張したいことは、実はいじめている子だっていじめられているという事実でした。攻撃的な社会は家庭内暴力、幼児虐待を生み出し、社会全体のいらいらがどんどん一番弱い子供たちに向けられ集積していきます。ではその子どもたちはどうすればいいのか。結果、子どもたちの中でいじめる側、いじめられる側が作られていきます。まさにそれが顕在化していったのは1991年以降だというのです。
■何故いじめが起こるのか
いじめが起こる原因なのですが、ここでひとつ、エピソードを紹介します。タレントのさかなくん(宮沢まさゆき東京海洋大学客員教授)は、ご自身も中学一年生の時に「仲間はずれ」にされた経験を振り返って、実は魚も同じだとおっしゃっていました。例えばメジナは広い海では仲良く群れをなして泳いでいるのに、狭い水槽に入れると1匹を仲間はずれにして攻撃するというのです。そしてその1匹をかわいそうにと別の水槽に入れると、他の1匹が同じようにいじめられるというのです。そういう意味ではストレスに追い込まれる環境というのは全ての動物に当てはまるのかもしれません。先ほどの児童・生徒を対象にした文科省の追跡調査でもいじめの原因はストレスであると結論付けています。
■政策面でのいじめ問題
最近になって文科省でも、いじめを人権侵害として学校という閉鎖的な中で解決するのでなく、外部の機関と連携しなければ解決できないと認識し始めたのではないかと思います。
ただいじめというのはいじめる側、いじめられた側への中立性が必要な問題です。そういう意味では私自身はスクールカウンセラーを是非拡充しようと力をいれています。スクールカウンセラーは小学校の場合は半分(12,000校)程度、中学校には全校(9900校)に設置できていますが、いじめられている子どもの心のケアや、プライバシーが守られる施設整備など、これも国会で取り上げ、政府に改善を求め続けています。
■いじめを起こさない為には
私は「いじめや暴力を許せない、見逃さない」という学校・社会の風土が重要だと思っています。広島市、大阪市、静岡の藤枝市などで「ピア・サポート運動」という、子どもたちが、子どもたち同士で声を掛け合ったり、他人への思いやりを教え合っていく運動があります。この子どものコミュニケーションや思いやりを育む助け合い運動は、いじめられているという意識が全校で減ったという実績につながりました。
また、長野県伊那市のある中学校では「いじめや差別を絶対に許せません」といじめ根絶の「人権宣言」を生徒自らが2年がかりで採択したという動きがあります。兵庫県小野市では学校だけでなく、職場や家庭、地域社会からも「いじめ」を無くそうと、「いじめ等防止条例」(08年4月)が制定され多くの市民が参加しています。このような「草の根」運動をまず推し進めながら、そして学校現場と他機関の連携を作っていきたいと思っています。
「子どもたちのメッセージ」は毎週日曜日17:25~40 ラジオ日本AM1422Hzで放送中です。(→番組ホームページ)
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