1月29日 子どもたちへのメッセージ(第五回)の収録を終えて
第五回は「子どもたちの心のつながりの再生」についてお話しします。心のつながりの希薄さが子どもたちを追い詰めてしまい、結果心の病や犯罪へと結びついてしまうのならばその原因はなんなのでしょうか。その問題の解決には「地域の声掛け」が重要であると、水谷さんは現在全国で広めているある運動を紹介しました。また地域だけでなく学校でのケアについて政策面から浜田がお応えします。
■原因としての社会構造の変化
皆様、こんにちは。参議院議員の浜田まさよしです。第五回目のテーマは「子どもたちの心のつながりの再生」。現在この心のつながりが希薄になっていることが問題となっています。
その原因として第一には、家族構造の変化があります。家族の平均世帯人員は我々が生まれる少し前の昭和28年には5人でしたが、平成22年には2.59人で半分となっています。特に三世代同居の比率は、最近の25年間で45%から16%と急激に減っています。我々の世代では家に帰ると、また友達の家に遊びに行くと、祖父母がいたのが普通でした。ですが現在ではその光景は稀となっています。
第二には新しい技術の発展により、インターネットやゲーム、携帯やスマートフォンの普及が挙げられます。兄弟の数が減ったこともあり、一人で過ごす時間が増え、直接顔をつきあわせて、自分の気持ちを伝えるのが苦手な子どもたちが増えていると感じます。
第三には、子どもたちだけでなく我々親の世代でも働き方が大きく変化しています。いわゆる社会で「非正規」のような不安定な仕事の割合が増え、親の世代自身の職場での「心のつながり」が感じにくくなっているともいえます。
■心のつながりが無くなることの影響
心のつながりが無くなることの影響は大きいです。水谷さんは、今までの放送でもお話ししたリストカットやうつ病、薬物犯罪は誰も助けてくれない孤立化の中で心が病んでしまった結果起こりうると指摘しました。また、例えば12歳で心が病んでしまい、不登校やひきこもりになったという子は、30歳になっても精神年齢は12歳なんだと水谷さんら専門家は言います。そのような状態ですから外へ出て友達が欲しいと思っても、その年代の子どもたちがいる場所に向かってしまいます。一時期学校侵入が社会的問題になったこともありましたが、それはさみしさの中で社会に対する恨み、そこから犯罪に染まっていってしまうという可能性もあるとしています。
私は1年前に、練馬区にある東京少年鑑別所を訪問し、このような話を聞きました。昔は、悪い交友関係との「つながり」から非行に走る子どもたちが多かったのですが、最近では友人や大人たちとの「つながり」がないが故に、動物虐待やリストカット、さらに非行へという子どもたちが増えているというのです。
■心のつながりの再生のために
水谷さんの講演会でのエピソードになります。10年前に神奈川県藤沢のある中学校で薬物乱用防止の講演会を行っていた水谷さんは、一人の生徒から質問を受けました。「どうすれば薬物を遠ざけることができるのでしょうか」と、水谷さんは「笑顔と挨拶」と答えたそうです。笑顔のあふれる場所には薬物は近寄ってこない、その笑顔を広げるためにどんどん挨拶をしていこう。それは水谷さんが全国で広めている「8・3運動」に通じるものでした。それは子どもたちが登下校する時間帯、すなわち午前8時と午後3時に、地域のできるだけ多くの大人たちが仕事や家事の手を休め、通学路に立つという運動です。子どもたちに優しい目を向け、下を向いている子にはどうしたのと声をかける、昔には当たり前だったこの光景を地域で広めていけば、子ども達は人のつながりを信じ、優しい子になってくれるはずだと水谷さんは述べました。
私自身もこの「地域の声かけ」は重要だと思っています。特に昨年の3.11の大震災を受けて、今、家族や地域の「心のつながり」の価値を再確認しようという意識が芽生えてきているのではないでしょうか。その意識の変化を生かしていきたいと考えています。
■児童支援専任教諭
子どもたちにとって忘れてはならないのは家庭や地域だけでなく、先生との心のつながりです。そこで、学校の先生だけは少し時間的余裕を持って児童指導に当たってもらう為、ある取組みを横浜の小学校で始めました。これは「児童支援専任教諭」という制度で、40代、50代の子どもの相談のプロ、またはベテラン先生が授業時間を半分以下(週12時間程度)にして、子どもの相談や若い先生のサポート、荒れた教室ではチームティーングに当たるというものです。
この制度を導入したある学校では、今までは朝の出席確認の後、そのまま担任が授業に入っていましたが、これでは遅刻した子や休みの子は午前中、または一日中来ることができません。そうしないように、専任教諭が全校的に遅刻児童の家庭に連絡を行うようにし、結果不登校が大幅に減った例があります。またある別の学校なのですが、母子家庭で母親の帰りが遅い中、寂しさ故のネット依存から不登校になってしまった小学6年生の女の子がいました。しかし専任教諭の度重なる家庭訪問により、親子が向き合い、元気に学校に復帰したとも聞いています。この制度は平成22年度からスタートし、5年間で350の小学校すべてに導入する予定です。子どもたちの心のつながりの再生に向けて一歩ずつ進めていきます。
「子どもたちのメッセージ」は毎週日曜日17:25~40 ラジオ日本AM1422Hzで放送中です。(→番組ホームページ)
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