改正建築基準法、沖縄等で「簡易適合判定制度」を実現(08年11月)

08年秋の状況では、耐震構造計算偽装事件を受けて07年6月から新建築基準法が施行され既に一年以上が経過しましたが、未だ、確認申請審査手続きの煩雑さが解消されたと言える状況にはありませんでした。

特に、構造計算適合性判定については、改正前の確認申請から判断すると月当たり5000件程度の申請があると予想されていましたが、07年3月以降約 2000件程度で推移しています。これは、構造計算適合性判定を受ければ建築確認審査が実質3ヶ月を超えるなど不都合が多いことから、当該適合性判定を回避した設計(ルート1:柱などの断面積を大きめにする簡易な構造計算)になっているものと考えらます。

このことにより、少なくとも鉄骨造で月約1000件、鉄筋コンクリート造で約500件の構造物が、鉄骨、鉄筋やコンクリートを余分に使う結果となり、資材高騰の背景の中、建設コストの大幅な上昇を増幅する要因にもなっています。

特に、沖縄では、「台風が多く、地震が少ない」という風土から、鉄筋コンクリート構造の住宅が多く、その構造設計のほとんどが適合性判定を要するものとなり、地元の住宅建設が大きく遅れ、建設不況が特に深刻化する状況にありました。
このような、背景や建設業界を取り巻く経営環境が依然厳しい現状に鑑み、浜田は、大学時代の専門が建築の構造工学であった経験を駆使して、国土交通部会で建築構造設計事務所、建築主事、建設業界から精力的にヒアリングを実施するとともに、建築基準法及び関連施行令・規則・通達を読み込みました。その結果、現行法制上、本来「適合性判定は各都道府県の任務」である点に着目し、一定規模以下の建物については的確・迅速・安価な適合性判定を各都道府県自ら行う制度を同部会で提案しました。

これを受け、08年10月29日、太田代表を先頭に金子国土交通大臣に緊急申し入れを実施しました。具体的には、

  1. 各都道府県の実情に応じ、小規模・一定技術以下の構造計算(例えば、沖縄においては3階以下且つ 300㎡以下の鉄筋コンクリートの構造物に対してルート2(一定程度の精密な構造計算で断面積を最適化する構造計算)で行う場合)については、外部の適合性判定機関ではなく、都道府県自らが専門的識見を有する者の活用等により、的確・迅速・安価に適合性判定を行う体制を整備すること、
  2. 計画変更、設計図書の差し替えを柔軟に行える体制を整備すること等を要請。

これに対し、08年11月12日、国土交通省住宅局建築指導課は、各都道府県に通達を発出するとともに、各地に都道府県自ら的確・迅速・安価に適合性判定が行えるよう「建築設計サポートセンター」の設置の予算が08年度補正および09年度本予算で計上されました。
そして、その第一号として、沖縄では浦添市に設置が決定され、地元の住宅建設円滑化を推進する体制が実現しました。


金子国土交通大臣へ申入れ (2008/11/12)

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