「核なき世界」をめざして(公明新聞 2019年8月5日付 1面)
設立時から座長を務めている公明党核廃絶推進委員会は、今年で10年の節目を迎えます。広島、長崎の「原爆の日」を前に、「核兵器のない世界」の実現に向けた取り組みなどについて、公明新聞のインタビューに答えました。
【2020年NPT会議 日本が合意形成促せ】
——2009年12月に核廃絶推進委員会を設置した背景は。
当時は2010年の核拡散防止条約(NPT)運用再検討会議の直前でした。同会議は5年に1度、核不拡散に関する問題を議論しますが、2005年の会議は最終文書を採択せず決裂。NGO(非政府組織)関係者から2010年は成功させたいと、協力要請をいただいていました。
また、2009年8月の衆院選で野党に転じ、もう一度、公明党らしさを見つめ直している時でもありました。新しい党のビジョンでも「平和」は重要な位置を占めていました。そこで、長いスパンで継続的に核廃絶を議論し、NGOと政府を橋渡しする、対決型・対立型ではないプラットフォーム(共通基盤)として公明党核廃絶推進委員会は設置されました。
――どんな視点で取り組んできたのか。
核廃絶を本当に実現しようとする時、核廃絶という「理想」と安全保障(核抑止)という「現実」のギャップを埋める必要があります。このギャップを埋め、イデオロギー(政治的立場)を乗り越えるには、「被爆の実相」や「非人道性への共感」を基盤にして近寄る必要があるとの方針で取り組んできました。
まずは「被爆の実相」を知ってもらうことが重要だと外務省に訴え続けました。同省もこれに対応し、世界の首脳が集う会合を被爆地で開くなどして、ついに2016年にはオバマ米大統領の広島訪問が実現。そのほかにも各国要人が被爆地を訪れたり、国際会議に被爆者の代表が出席するなど、被爆の実相を広く世界に伝える取り組みが大きく前進しました。
写真:NGO(右側)を交えて活発に議論する党核廃絶推進委員会と青年委員会の合同会議=7月29日 参院議員会館
――今後の取り組みについては。
2017年に国連で採択された核兵器禁止条約の交渉過程で、核兵器保有国と非保有国の溝は深まりました。核禁条約は、国際的に核兵器を禁止する規範を確立しようとする画期的な一歩であり、公明党も大局的な視野から評価していますが、核軍縮を具体的に進めるためには、もう一度、両陣営の橋渡しをしないといけません。
橋渡しの一つの手段として、核保有国と非保有国双方の有識者を日本に招き、核軍縮の進め方を議論する外務省主催の「賢人会議」が創設されました。同会議は、公明党の提案で被爆地の広島市と長崎市でも会合を重ね、9月には、これまでの議論をまとめた報告書を外務省に提出します。さらに後継組織として有識者とNGO、そして関係国の政府関係者が議論する「1・5トラック」会合を外務省が開いていきます。これらを通じ、日本が来年のNPT運用再検討会議で核軍縮に関する合意形成を進める役目を果たしていくべきだと考えます。
――党は核廃絶にどう取り組むか。
冷戦後の核軍縮の支柱であった米ロの「中距離核戦力(INF)全廃条約」が8月2日に失効しました。このように、核廃絶を取り巻く現実は厳しくなってきています。
新たな軍拡競争への懸念も広がる中だが、それでも日本は唯一の戦争被爆国として、国際社会に対して核廃絶を訴える権利と責務があります。日本が核保有国と非保有国の真の橋渡し役となるよう、公明党が与党として支え続け、さらに政党外交などを通じて、国際社会に核廃絶を訴え続けていく決意です。
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