新ハマダレポート Vol.20.ーリスクコミュニケーションについて対談(その1)ー

新ハマダレポート Vol.20. 2023.9.11

ーリスクコミュニケーションについて対談(その1)ー

東日本大震災・原発事故から、12年半になります。

 改めて、復興への決意を新たにし、風評と風化という、2つの風との闘いに挑み続けます。

 先週の6日、東日本大震災・原子力災害伝承館の高村館長(長崎大学教授)と、リスクコミュニケーションを中心とした復興学を学ぶ学生さん向けに、対談を行いました。

 ALPS処理水の海洋放出が始まり、中国による日本産水産品の輸入禁止への対応が迫られている今、我が国のリスクコミュニケーションの在り方が問われています。

 私が、経済産業省時代から復興副大臣時代を含めて、この分野に長年、取り組んできて、学生の皆さんにお伝えしたかったことは、以下の3点です。

1.科学的見地から自ら考え、異なる立場の対話に共通基盤を提供し、橋渡しを行うこと。

2.科学的対話の決着を待っていては実害が拡大することが懸念される場合には、議論はさておき、救済を優先すること。

3.対話する姿勢として重要なことは、何かを伝えようとする前に、相手の言い分を受容し、信頼関係を構築すること、です。

 本日から、何回かに分けて、その対談内容を発信させていただきます。

 第1回の今回は、経済産業省時代の取組み(その1)についてです。

 化学産業、バイオ産業や石油産業などを主に担当してきたことから、化学物質の安全行政にかかわることが多かった中で、最も印象深いのが、「環境ホルモン」問題への対応です。

 「奪われし未来」という本を覚えておられるでしょうか?

 1996年に、米の環境活動家のシーア・コルボーン女史他による著書で、当時の米副大統領のアル・ゴア氏が序文を寄せたことで話題を呼びました。

 野生生物の減少をもたらした最大の原因は、外因性内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)が後発的な生殖機能障害もたらしたという仮説を提唱し、それが野生生物のみならず、人の男子の精子数の減少などを引き起こしている可能性にも言及し、一大センセーションを引き起こしました。

 日本でも当時の環境庁が、67の懸念物質を公表したこともあり、環境保護団体と産業界が学者を巻き込んだ大論争を日本でも繰り広げていたのです。

 1998年に海外赴任から帰国し、担当室長に就任した私は、省内外を説得して、環境省との共管で、1999年に化学物質管理法という法律を制定し、懸念物質の環境への排出について徹底した情報公開を2002年から進め、科学的対話の共通基盤を提供しました。

 その結果、冷静な科学的研究が促進され、当時、環境庁が懸念物質とした物質のほとんどが、明らかな内分泌かく乱作用は認められないと、今では判断されています。

 次回は、2002年に突如発表された中国よる日本産化粧品の輸入規制についてです。お楽しみに!

 

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